新しい波を待つきみへ・・・

全く新しい宿を作るための孤独で地道な闘いでした。
代表取締役 鈴木良成

浜の湯の創業は1974年。客室6室の民宿旅館としてスタートしました。3年後には客室20室の規模となります。ちっぽけな旅館にどうしたらお客様を呼べるか、を考え抜いた結果、料理に特化すること「食べるお宿」というコンセプトにたどり着きました。1995年には22億円を投資して44室の規模となります。稲取漁港の入札権を生かして新鮮な魚介を仕入れ、朝から舟盛りを提供するというサプライズを実施しリピーターを着実に増やしていきました。団体客が減少し始めた2000年ごろ、私は個人客へのシフトを決意しました。個人客が満足する高級旅館へ、世界に誇れる接客へ私たちは歩み始めました。

浜の湯の売りは料理。そしてそのお料理は夕食も朝食もお部屋出しで、担当の客室係が行う。つまりお出迎えからお見送りまでを完全担当制でお世話するという、本来の日本旅館のおもてなしが浜の湯の魅力です。このお出迎えからお見送りまで一人が担当するという仕組みは、日本旅館にしかないおもてなしです。すばらしい文化だと私は思います。仲居さんが純粋に、お客様の一日を最高のものにしてあげたいと願い、寄り添い、お客様と共有する時間を楽しみながら作り上げる幸せな時間。

しかし当時は客室係の高齢化が進み、サービス力の低下が顕著でした。そこに団体客も減少していく現実にも直面し、個人客をターゲットとした方向転換は急務のことでした。「二名客超重視の商品構成」を目指し、様々なタイプの客室や風呂の開設など設備投資と料理の充実に努め、サービス力を向上させ、顧客満足を高めることを目指しました。

慣例を廃しやる気のある新卒の採用を。

個人のお客様にパーソナルな接客を行うためには、教育レベルの高い人材が不可欠と考え、私は四年制大学新卒採用に取り組みました。その当時、四年制大学新卒を採用しようという旅館はほとんどなく、ハローワークに募集を出しさえすれば集まると思っている宿が大半でした。しかし私は今までになかった取り組みを進めるためには、中途ではなく、新卒のやる気のある人の想いを生かしたほうがいいと考えたのです。

こうした転機を好機に、均一的なサービスの向上とともに「完全パーソナルサービス」を志向しました。なかでも現場の担当者がお客様の情報をデータに落とし込んでいく仕組みづくりを自らに課しました。我々は「顧客カルテ」と呼んでいますが、担当の仲居がお客様の情報をシートに手書きしてスキャンしたものを蓄積。次回にいらしたときに活かすシステムで、それはお客様の好みや接客時に記憶に残った会話にまで及び、お客様の来館のたびにサービスが向上していく仕組みとして、全セクションに拡大していきました。施設は経年劣化が避けられませんが、サービスはどんどん上書きされ、良くしていくことができます。それこそが浜の湯の強みだと私は考えています。

顧客カルテの記入や料理の一品出しなどの煩雑な作業に対応できず、ベテラン客室係の多くは退職し、非常に苦しい時期もありましたが中途採用は行いませんでした。諦めたら変わらない。その思いが強かったのだと思います。

一人ひとりが“主役”の「お宿の顔」に。

浜の湯ではお客様がお着きになり、お帰りになられるまで一人の接客係が専任でつくという昔ながらの旅館のやり方を貫いています。そのためお客様のもっとも近くで、宿の顔として支持されるのは、なんと言っても現場の全てを取り仕切る「客室係」なのです。私はもっと仲居さんの地位を高めたい。もっと讃えられるべき仕事としてみなさんに注目していただきたい。価値ある仕事として、仲居さん一人ひとりを主役にしてあげたいと思っています。

新人の採用は、私が担当しており、会社説明会から最終面談まで全て関わっています。その際、浜の湯のサービスのあり方をしっかり伝え、入社式の段階では既存社員よりもサービスに対する意識が高くなっていることを目指しています。そうした社員はお客様からのクレームや質問に対しても自分で判断して対応することができます。その場で対応してほしいお客様に、いちいち上司の判断を仰がなければ動けないのではなく、浜の湯のサービスをきちんと理解していれば、お客様にとっていちばん良い解決策がひらめくはずです。私は「お客様のためにひらめいたことは全て実行してください」と伝えています。

日本旅館としてあるべき未来を目指して。

合理的な経営を考えるのであれば、厨房隣の大広間を食事会場にするほうが効率は良くなります。しかしお客様とのコミュニケーションを深めるためにはお部屋食事のほうがよく、昔からのやり方を貫くことで日本古来の和の文化を伝え、守ろうという気持ちも続いていくものです。

一人ひとりが“主役”の「お宿の顔」に。

すばらしい日本旅館の文化。でも旅館の接客は世間的にあまり評価されることはありませんでした。ディズニーランドの接客サービスが称えられ、リッツカールトンや帝国ホテルのホスピタリティは本にもなっていくけれど、旅館のサービスは注目されない。それでは日本人としてさびしいではないですか。だから当社は日本旅館ならではのサービスのあり方、他ではやっていないおもてなしにこだわるために人に投資し続け、設備投資と同様に、サービス力・料理の向上に挑戦し続けるのです。そしてお客様の喜びと感動が、自分たちの喜びと感動なのだと心から純粋に思い、お一人おひとりのお客様を大事にすることの積み重ねが、本当の満足をつくると信じて。

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